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尾道市三軒家町3−23 (栗原温泉と同じ並び)

昔は駅裏の三軒家町や天満町にはたくさんのお店や町工場、工房などがあったそうです。
ご近所の方から、駅裏のメインストリートにはお店が建ち並び、それはそれは賑やかで七夕飾りが両サイドに並びトンネルのようだったのよというお話を聞きました。北村洋品店のある東西の通りも一銭食堂や焼きいも屋さん、駄菓子屋さん、八百屋さん、総菜屋さんが立ち並び、昔は「子ども銀座」と呼ばれていたとも。そんな通りも今では空き家も増え、店主の高齢化や世代交代で営業をしていない店舗も多くなりました。その中の元洋品店の建物が「子連れママの井戸端サロン・北村洋品店」(旧北村商店)です。
昭和30年代に建てられた今の建物は木造モルタル2階建てで、とんがり屋根が目印です。
長年空き家で、ひどい雨漏りと主要構造部の腐食とシロアリ害で、よく立ってるなと思えるぐらいの痛みようでした。また戦後の貧しかった時代の建物なので、材料も悪く建て方にも色々と問題がありました。この家は、子連れのママさん達が赤ちゃんや小さいお子さんを連れてきても楽しめるような家にしようという目的とそのプロセスにおいて、多くの人に家を建てるということの面白さを感じてもらえるような家にしようというコンセプトで再生をしました。



建物のみどころ:

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屋根:この上ない傾斜のとんがり屋根は当時の店舗建築でも流行ったようです。もともとボロボロのセメント瓦でしたが、雨漏りを防ぐため、3つの屋根をひとつの板金で覆いました。青いガラリがレトロです。
外壁:1階は建築塾再生現場編でドイツ壁仕上げをみんなでしました。モルタルを飛ばして引っ付けるだけの簡単安上がりな手法で、それだけで建物が洋風に見えるというので、洋風住宅が流行った時代の家によく観られます。現在では人件費削減もあるのか、手間のかかるこの仕上げをする家も少なくなりました。2階は吹き抜けにする時に解体した2階の床材を細かく切って、ウロコ壁仕上げにしています。粗いこけら葺きのようなつくりになっています。木製の建具やタイル風鉄板はオリジナル。出窓はアートユニット・もうひとりの作品「scab」、夜になると時が青空色に浮かび上がります。尾道でよく使われる木目調トタンをあえて取り入れています。
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土間:入り口の木製のけんどんシャッターはオリジナル。夏は全開、冬は小さいドアだけ開けれる便利もの。ショーウインドウは屋根がひどい雨漏りで生きたシロアリがうじゃうじゃいたので、解体して復元プラスαしています。床のモザイクタイルは広島市内のゲーンス幼稚園の園児の作品で海の中の生物をモチーフにしています。階段は座敷にあったものを移築しただけなので、傾斜は敢えて昔のまま。柱と手すりの装飾はパサールあきさんとなつさんの作品。また木製建具やショーケース、ワゴンなどは全てこの家にあったもの。縁側は古く見えますが、船の足場材の古材で新しく設置したもの。明かり取りもあって吹き抜けにした2階まで続く壁は建築塾再生現場編で掻き落とし仕上げを試したもので、雲の模様は漫画家つるけんたろう氏のデザイン。屋根裏の構造がよく分かります。
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1階和室:ど真ん中にあるのはちゃぶ台として利用している井戸。工事の途中に床下から出てきたものを井桁の石を一旦外してブロック2段分かさ上げし、床から座卓の高さに来るように人力で設置し直し、透明のアクリル天板を貼りました。これぞホントの井戸端サロン!内部には照明や装飾を施し、いつも満タンの井戸水も望めます。脇には2階にあった床柱を構造補強のため設置し、当時尾道大学の美術生だった竹内かなさんに「背くらべの柱」というテーマで作品を施してもらいました。壁は中塗り土仕上げ、天井は建築塾に参加した親子で丸太を手のこで切ってもらい、はり付けて完成させました。壁には昔のボンボン時計が今も時を刻み、地元の若いアーティストさんの作品がひとつひとつ増えていっています。レトロな足付きのテレビや茶箪笥などはもともとこの家に残されていたものを再利用しています。トイレは入り口の方向を変え、一旦丁寧に剥がしたタイルが新しく作った壁面に何事もなかったかのように貼付けられています。その他のタイルや建具はオリジナルのままです。
1階台所:台所はオリジナルのままで、水道管を新設しただけて何も手を加えていません。流し、壁、床が当時のレトロなタイルで覆い尽くされており、なつかしさをかもし出しています。
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2階:アールのかかった天井には地元の若い女性のアーティスト・白水摩耶子さんの作品で仕上げられています。ジグラフィートというイタリアのフレスコ画の技法で、削り出して下地の色を出しており、非常に手の込んだ立体作品になっています。カラフルな瓶の底のガラスと端材を組み合わせた照明は「ボトルバーyes.」の徳永栄二さんの作品です。壁面は建築塾で漆喰を軍手仕上げにしました。床も建築塾で安い下地用の板を加工して面白い仕上げにしています。足付きのステレオ、マネキン人形やハンガー掛け、レトロな棚の数々は洋品店時代のものです。
奥の4畳ほどの変形した部屋はNPOの事務所で家具も内装も当時のままです。


再生プロセス

2007年6月:旧北村商店内部見学
代表の豊田が旧北村商店の内部を初めて見学しました。20年ちかく空き家だったらしく、昼までも真っ暗なぐらい荷物が天井まで積み上げられており、足の踏み場がわずかにあるくらいでした。下駄箱だけでも4つあり、ハコモノだらけでした。天井は大きな穴が開いていてお空が見えており、長年のひどい雨漏りで梁も柱も腐り、構造的にも大変危うい状態でした。1階の床も腐って落ち、生きたシロアリが2階までうじゃうじゃ回っていました。戦後の貧しい時代に安い資材で仕上げられており、建築的価値は大変低いものでしたが、元洋品店としてのレトロな面影や残存品に心を引かれ、このままでは解体されてしまうであろうと思い、付加価値をたくさんつけて、みんなで家をつくるということを学ぶ家として再生することを決意しました。

2008年5月:再生第一段階ボランティア作業
こちらもまずは、朽ち果ててもう使えないものとまだ使えるものを入念に選別し、不要品やゴミなどをクリーンセンターへ運ぶ作業を学生さんや主婦仲間なども含めボランティアの力で何度も行いました。この時再生後に利用したいレトロな家具や家電の保管場所として、路地裏の「楽山荘」(現三軒家アパートメント)に出会いました。

2008年6月:図面作成と改修計画
一級建築士の片岡八重子さんに手描きの図面を仕上げてもらい、職人さんと一緒に改修計画を立てました。
ハウジングアンドコミュニティ財団と福武に助成を受け、「建築塾再生現場編」というワークショップ形式で多くの人の手を借りて、家をつくるということを学びながら再生していくことになりました。建築資材は出来るだけ、再利用品や古材、天然素材のものを使い、小さなお子さんの目にも家が面白く映るよう、突飛なアイデアを盛り込み、仕上げのデザインにこだわりました。
         
2008年7月:専門家の工事
腐ってボロボロになっていた2階の梁と柱を入れ替えたり、補強したりといった大工事を職人さんにやってもらいました。シロアリでサクサクだった壁面も解体し、面的に耐震補強も施しました。この上ない傾斜のとんがり屋根にも足場が掛けられ、屋根の下地補修と外断熱工事が施されました。屋根はペンキが剥げてもろい状態のセメント瓦だったので、ボランティアも手伝って瓦を全て下ろし、向きがバラバラだった複雑な3つの屋根を板金でまとめて覆い、今後も雨漏りになりにくいように仕上げてもらいました。赤水の出ていた水道管や漏電の危険性のあった電気も全て新しく新設してもらいました。

2008年8月:DIY工事       
大工さんの指導のもと、間取りを変えるための壁の解体工事や床組工事、天井の解体工事などを行ないました。暑い真夏の作業は応えました。

2008年9月:「尾道建築塾 再生現場編 」の開催
空き家の再生工事の一部分をワークショップ形式で行ないました。実際に体を動かして再生現場の作業に参加することで、職人さんの技から様々な発見があったり、DIYの面白さに出会い、この経験を別の物件でも活かしてもらいたいという目的です。
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2008年9月12〜14日:「木工コース」の開催 
現役大工の豊田訓嘉を講師に木工の基本を教わりながら、3日間北村洋品店各部の仕上げ作業を行いました。
第1回「半端材を利用したオモシロ床仕上げ体験」
壁の下地に使うような安い材料を手を加えることによって面白い仕上げ材として2階中央の洋室の床に利用しました。のこぎりの種類や使い方を教わりながら様々な長さに切り、色んな色のペンキで塗り、かなづちの使い方を教わりながら打っていきました。微妙に違う色の端材がモザイクのように組み合わされた床は、何とも言えない表情をかもし出しています。
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第2回「廃材を利用したウロコ壁仕上げ体験」
吹き抜けにする時に解体した2階の床の廃材や色んなところからかき集めてきた古材を細かく切って2階の外壁にウロコ貼りにしていきました。墨の打ち方やスライド丸ノコやエアータッカー等の電動工具の使い方を教わりながら仕上げました。
色や木目の違う廃材がウロコのように貼付けられ、よく見ると字が書かれていたりと面白い仕上げです。
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第3回「丸太を利用したアイデア天井仕上げ体験」
小学生以上の親子に参加してもらい、廃材で出た丸太をのこぎりでスライスして1階の和室の天井の仕上げとして貼付ける作業を行いました。
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2008年9月26〜28日:「左官コース」の開催 
現役左官職人の山本和男を講師に左官の基本を教わりながら、3日間北村洋品店各部の仕上げ作業を行いました。
第1回「簡単モルタル仕上げ体験」
外壁部のモルタル仕上げを下地作りから教わりました。タッカーの使い方やモルタルの配合、コンクリートとの違い、コテさばきまで左官の技をじっくり教えてもらいました。
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第2回「技あり漆喰仕上げ体験」
比較的塗りやすい漆喰塗りの体験を広い面積で体験しました。素人でコテ押さえできれいに仕上げるのは難しいので、軍手仕上げという簡単な技法を教えてもらい、渦を描くような仕上げにしました。         
第3回「ドキドキ!ドイツ壁仕上げ体験」
洋風に見せるための技として戦後くらいまではよく使われていた技法を復活。北村洋品店に一部残るドイツ壁仕上げを全体に施しました。モルタルを刷毛のような道具で叩き付けるだけという単純さで、小さなお子さんもトライしました。

2008年11月13日:「タイルワークショップ」の開催 
広島女学院大学の非常勤講師を務めるアーティスト三上清仁さんの指導のもと、同大学内のゲーンス幼稚園の年長の園児のみなさんとタイルワークショップが行なわれました。テーマは海の中の生物。魚やたこ、貝など好きな下絵に小さなモザイクタイルを貼っていきました。         

2009年1月7〜8日:「建築塾 再生現場編第3期」の開催 
DIYの達人で、自ら空き家を再生し、「坂の風」という貸別荘を運営する島田典幸さんを講師にタイル貼りと古材で縁側を作るワークショップを行ないました。         
第1回「楽しいモザイクタイルを貼ろう!」
広島女学院ゲーンス幼稚園のみんながデザインしてくれたモザイクタイルの作品を、北村洋品店の土間一面に貼付けるワークショップを行ないました。下地をよく掃除してから、タイルボンドで接着後、目地材を流し入れひたすら磨きます。浮き上がってきたパッチワークの様なモザイクタイルの床に感動しました。
第2回「廃材でポカポカ縁側を作ろう!」
造船所で使っていた古い足場板の端材を使って、北村洋品店の土間と座敷の境目に小さな縁側を作りました。のこぎりでごつい足場板を切断し、初めてのインパクトドライバーでおそるおそるビスで留めていき完成!古材を使うと新設なのに、前からあったみたいにしっくりきます。

2009年1月11〜31日:アートイベント「家をつくるということ。」の開催 
多くの人の手を借りながら何ヶ月も再生作業をしてきた北村洋品店の最後の仕上げを地元の若いアーティストさんにお願いし、パーマネントの作品として家の至る所を各々の作品で仕上げてもらいました。

2009年2月2日:「子連れママの井戸端サロン・北村洋品店」オープン!
ぞろ目にこだわって、2月2日にオープンしました。          

*再生の模様や関わった職人さんやアーティストさんの紹介をした正式パンフレット@100円も販売中
*1階は子連れママの井戸端サロンとして,平日10:00〜16:00(土日休日は不定休)で開放しており、どなたでもご自由にご利用出来ます。
*2階はベビー服や子供服、おもちゃなどのリサイクル品を格安販売しています
*2階に「ママさんの小売店」という手づくり品の販売コーナーもあります。
 スペース代@500円で、売れなかった月は無料です。空き状況は直接お尋ねください。

詳しい予定は、HPの予定表のページをご参照ください。


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